「赤ちゃんはことばをどう学ぶのか」の感想&レビュー!

駐在に帯同することは決めたけど、
日本語が通じない環境で子どもは大丈夫なのだろうか…
私が直近で心配をしていることです。
そもそも、子どもは言葉をどのように覚えているのか。
メカニズムが分かれば渡航前に準備ができるかも?と思い、一冊の本を読みました。
赤ちゃんはことばをどう学ぶのか
結論からいうと、未就学児を連れて、海外に滞在する人にはオススメの本です。
一冊まるまる読む時間がない人向けにネタバレを含め、本書のご紹介をします。
- 未就学児を連れて、海外赴任に帯同する予定である
- 日本語以外の言語環境で、保育園・幼稚園に通うことを考えている
- 渡航前に少しでも準備をしておきたい
本書の概要
筆者について
針生悦子さん
東京大学大学院教育学研究科の教授です。
主に、2才以下の子どものたちの言語発達を専門にされています。
研究室のHPはこちら
本書の目次
- 第1章:赤ちゃんは本当に「天才」なのか
- 第2章:まず、聞く
- 第3章:「声」から「ことば」へ
- 第4章:子どもはあっという間に外国語を覚えるという誤解について
- 最終章:必要だから、学ぶ
海外赴任前に参考になったところ
ことばを理解するためのメカニズム、まずは聞き、ことばを捉える。
自明のことかもしれませんが、赤ちゃんは生まれた瞬間から母語(第一言語)を浴びています。
両親を含め、周りから発される音のつながりから単語を見つけるそうです。
次第に、その言語ならではの音の特徴(例えば英語のLとR)をとらえ、単語や助詞も区別できるようになります。
発育とともに1才頃から発語が始まりますが、それよりも遥か前から赤ちゃんは学習をしています。
ことばを「聞く」ところから規則性を捉え、学び始めているそうです。
英語を聞けば英語耳になるのか?
では、日本語が母語の子に英語を覚えさせるには、英語を聞かせれば良いのか?という疑問。
本書の中では、聞き分け実験が紹介されています。
英語で育った子どもに、中国語だけで区別される音を聞かせることで、その音を聞き分ける能力が発達するか、という実験です。
- 映像と音を聞かせた場合
- 音だけ聞かせた場合
- ネイティブとコミュニケーションをした場合
- 何も聞かせなかった場合
約3週間の実験では、映像や音を聞かせるだけでは、聞き分け能力は発達しませんでした。
唯一、ネイティブとの直接のコミュニケーションがあった場合のみ、聞き取り能力が向上したと言います。
ここからわかることは、単に母語以外の音を聞かせたとしても雑音として処理され、言語能力の発達には影響しないということです。逆に「言葉を学ぶ必要性」があれば能力は向上する、というのが筆者の主張でした。
個人的な感覚としては、大人も子どもも同じですね。
「子どもはあっという間に外国語を覚える」のか?
それでも、世間一般的にはこのような思い込みがあります。
本書の中では「間違った思いこみ」であることを主張してます。
私が印象に残ったのは3点ありました。
①母語が一通り話せるようになるまで約3年かかる
生まれた瞬間から母語を浴びて、発語を始めるまでに1年。
そこから、言葉を発し、単語を覚え、助詞を使いこなすまでに2年。
多くの子どもたちが、母語で一定の会話が成り立つのが3才くらいと言います。
産まれた瞬間から24時間、365日触れている言語を操れるまでに3年。
子どもといえども、相当な苦労をして言語獲得をしているということでした。
②中国人が日本の保育園に入ってきた例
日本の保育園(3才クラス)に中国人の子どもが入ってきた例です。
日本語は全くゼロからのスタートという状況。
身ぶり手ぶりで意思疎通をはかることも多く、半年たっても単語によるコミュニケーションは難しかったそうです。
③親の思い込み
我が子は「できる!」そう思いたい親の思い込みもあるのではないか、ということです。特に、親が第二言語に精通していない場合、子どもがその言語を正確に操れているか、評価することはできません。身ぶり手ぶりで、現地の子とコミュニケーションを取っていても、親としては「ああ、やっぱり子どもはあっという間に外国語を覚えたな〜」と思いたいのではないでしょうか。
筆者は「話せるようになるには、大変な努力が必要」と結論づけています。
個人的にも共感します。
子どもなりに、言葉が伝わらないことによるストレスもかなりあるのではないでしょうか。
単に「現地校に放り込めばどうにかなる」と考えるのではなく、子どもへのきちんとしたケアが必要だと思いました。
第二言語を学ぶのに適切な時期はあるのか?
最後に、どの年代で第二言語を学び始めると良いか、という点です。
研究によると、もっとも適切な時期は母語が確立し、抽象的な思考が確立したあと(具体的には小学校高学年〜中学生)だそうです。
逆に未就学児が第二言語になれるには、時間がかかるそうです。
「子どもにはいつから英語を聞かせたり、習わせたりしたら良いのでしょうか」という質問には「英語の文法を一通り習った後、お子さんが自分で覚悟を持ってい行きたいと言ったなら、留学でもさせるのがいいのではないでしょうか」というのが答えだそうです。
海外赴任に向けて準備しようと思ったこと
娘は日本語の習得もままならない3〜4才で現地の幼稚園に通うことになります。
筆者の研究を参考にしつつ、海外赴任前に3つの準備を進めようと思いました。
英語の教室を体験してみる
渡航後、いきなり英語の環境に飛びこむのは本人にもストレスかと思います。
せめて、日本語ではない言葉があることを知ってもらうため、英語の教室に連れていってみようと思いました。
コミュニケーションの中に英語を入れる
子どもとの接触時間が長い「両親」からの「コミュニケーション」が一番有効かと思いました。そこに必然性が生じるからです。
朝起きたら「Good Morning」と声をかけてみる、お願いするときには「Please」と言ってみるなど、身近な用語から使ってみようと思います。
絵本から英語にふれてみる
娘は字幕版の映画やアニメをみることはありますが、本書によると「雑音として扱われる」とのことなので、あまり意味がなさそう。
少しでもコミュニケーションが発生する「絵本」から、英語にふれる機会をつくってみようと思います。
他にも、キッズ英会話や英語の歌をうたう、など方法はあると思います。
順番に試してみて、娘にあった方法を見つけられたらと思います。
「赤ちゃんはことばをどう学ぶのか」
お時間がある場合は一度手にとって読んでみてください。
他にも様々な観察やデータが紹介されており、大変勉強になりました。